1. プロダクトポートフォリオ概論
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プロダクトポートフォリオ(ProductPortfolio)はGEとボストンコンサルティンググループによって開発され
た戦略経営の象徴的なツールである。
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これには習熟曲線原理、ライフサイクル理論、プロダクトミックスの構成コンセプト、事業の魅力と自社の力と
いった事業把握の観点、事業に対する資金の配分原則など企業戦略の有力理論が圧縮されていて、意思決定にも
大きな助けになるし、状況把握の分析手法としても有用である。
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ポートフォリオは大きく分けて2種類ある。定性ポートフォリオと定量ポートフォリオである。
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定量ポートフォリオは自社の強さの軸のパラメーター(計測値)として自社シェアもしくは自社のシェア
比を用い、事業の魅力の軸のパラメーターとして、その事業の伸び率(市場全体の伸び率)を用いる。
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方、定性ポートフォリオでは自社の強さのパラメーターとして「自社のシェア」「自社の技術力」「自社
の営業力」等をそれぞれ点数で評価し、それらを合計した数値を用いる。同じく事業の魅力の軸の値とし
ても「伸び率」「市場の大きさ」「平均利益率」「競合の状況」などをそれぞれ点数で評価し、その合計
したものを用いる。この他にも多くの項目が採用されることがある。他の項目例に関しては後述する「GE
のビジネススクリーン」を参照するとわかりやすい。
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自社の力や事業の魅力がそれぞれ多くの要素から成り立っていることを考えれば、定性ポートフォリオの
方が優れているように見えるが、自社の力や事業の魅力を構成する要素を均等に扱うと実態とかけ離れた
結果となることも少なくない。
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このような理由から定量ポートフォリオが多用されるが、定量ポートフォリオにも事業の魅力と自社の強
さを成長率とシェアで置き換えることによる不都合は少なからずある。
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基本的なポートフォリオでは全体を4象限に分け、それぞれの象限には象徴的な名称が与えられている。
(ここでは補助的に上の象限を第1象限としそこから時計回りに順次No.を与えた象限No.を付記する)
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そのそれぞれの象限に属する事業・製品に関しては基本的な方向性や採るべき施策に関する原則的判断が
示されるとする。これがポートフォリオの特徴の一つでもある。
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その象限ごとの判断、原則を示すと以下のようである。ただし、これらの判断等は原則的なものであるか
ら画一的に適用すると大きな間違いにつながることがある。他の情報とも併せて、その状況を的確に把握
した上で適用しなくてはならない。
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この象限にある事業は発展、拡大が期待できるし、成長があれば利益も得やすい。しかし、競争も激
しいことが想定される象限でもある。
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この位置にある事業では、コストダウン、投資抑制などで利益最大化を図れば競争に負け相対的地位
が下がる恐れもある。もし、市場での地位が下がれば得られる収益も上位の他社に比べれば格段に小
さくなる。
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従って、資源配分の考え方としてはこの事業から得られる収益はもとより、これに金のなる木象限に
ある事業の収益の一部をも加えて、この事業に投資をして、当面の競争に勝つことを優先するのが妥
当な考え方である。
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市場の成長に追随、適合するためにも、成長に乗じてさらに発展するためにも研究開発では新型製品
開発、品揃えのための関連新製品開発、競争に勝つための品質向上などを中心とすべきである。
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この象限にある事業はすでに競争上良いポジションを獲得していることを示す。しかも成長はあまり
大きくないことから競争が落ち着いていて、新規参入も余り無くその地位は比較的安定している。
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そのようなことから、この事業は利益を生む条件を備えており、他の事業と比較すれば利益の率、額
ともに群を抜いていることが多い。
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しかし、この象限にある事業は成長率が低いことが象徴するように成熟期に近い事業であることが多
く、近い将来衰退期が来ることを覚悟しなくてはならない。従って、この象限の事業で得た利益の大
半は次世代を担う花形事業、問題児事業につぎ込み、これらを育成する資金とするのが適当とされ
る。
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この事業への投資は現状を維持することや増益が確実に期待できる場合に限って行う。勿論、その場
合の投資資金も当該事業のフリーキャッシュフローの範囲以下でしかおこなわない。(他の象限の事
業に資金を提供しなくてはならないため、多くの場合、許容投資額はこの制約条件を大幅に下回る)
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研究開発では利益(率)を上げるためのコスト削減を目的とする生産サポートと事業(寿命)延命の
ための新型製品開発を中心に行う。競争は少ないとは言え、競合他社の様子を見ながら、必要に応じ
てこれらに対抗する開発も検討されてよい。
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企業の次世代を担う可能性を持つ事業が位置するポジション。
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この象限に属する事業は多くの場合、成長は大きいが売り上げは小さい。しかも、新規に参入した事
業が多いため、収益力も低く、単独では赤字であることも少なくない。
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資源配分としては金のなる木象限の事業・製品の収益の一部を原資とした投資を受けることが多い。
つまり、企業全体としてみれば、この投資は問題児象限事業の成長に次世代を懸ける操作とも言え
る。
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収益と費用の関係で(相対的に)見れば金食い虫でもあるため、同じ象限にある他の事業との比較、
競合他社との比較を含めた、将来性や可能性の検討を常に行い、望みが無いと判断された場合は淘汰
する操作も必要。そのためにもこの象限には常に複数の事業が存在していることが望ましい。
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また、研究開発が大きな役割を果たす象限であり、実施内容としては生産サポート、営業サポート、
新規製品開発などが中心になるべきである。
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この象限にある事業・製品に対する基本的判断は撤退であるため、投資は最小限に抑制される。望ま
しくは単純撤退でなく売却による資金回収(収益化)である。
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ただし、利益の出ている場合は売り上げの大きさなども勘案し、撤退、売却は慎重に検討されなくて
はならない。
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研究開発としては収益化の可能性を探るための、生産サポート、もしくは、この事業、製品を足がか
りにした新製品開発(周辺、関連製品の開発)が主となる。
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この事業・製品の流れを汲む画期的な次世代製品が想定される場合は研究開発によって事業が大きく
変貌を遂げる場合もあるため、この可能性も十分に調査し、そのような可能性が高い場合は売却も慎
重にすべきである。
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上記の判断などはあくまで原則にすぎないが、具体的な措置まで示されていることもあって、その事業の
属する象限による判断への影響は少なくない。従って、ポートフォリオを作成する場合、事業・製品のポ
ジションニングには注意を払う必要がある。
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実務上そのポジショニングに最も大きな影響を持つのは中心線の設定の仕方である。
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自社の力の中心線はシェア比※で0.7〜0.8、シェアの場合30〜40%、また、事業の魅力の中心線はそ
の企業が属する業界(業種)の平均伸び率を用いることが一般的である。
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※シェア比とは(自社のシェア/トップ企業のシェア)で表され、自社がトップ企業の場合は(2位企業の
シェア/自社シェア)で表される数値である
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また、事業の魅力の中心線は前述の通り業界の伸び率とするが、自社事業が属する業界をどことするかで
大きく変わる。
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また、特定業界でなく産業全般の伸びを採用する方が適当である場合もあるし、最終的にはGDPの値など
を中心線に使用する場合もある。要するに伸びの中心線は成長事業か否かを区分するものであるから、ど
の基準を使ってそれを計るかは状況、目的によって変わる。
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改良型ポートフォリオとしてはいくつかあるが、その中でも利益率を併せて表記したアライドコンサ
ルティングのポートフォリオは有用である。
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例えば、負け犬象限の事業、製品は原則撤退であるが、利益が出ている事業・製品とそうでない事
業・製品では自ずと処置が異なる。また、花形象限の事業・製品での研究開発は新型製品開発や品揃
えが優先としたが、利益がかなり悪化しているような場合はコスト削減など、収益改善のための研究
開発も採用されるべきである。利益率が併記されていることでこれらの判断が瞬時に行える。
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GEのビジネススクリーンはGEとマッキンゼーの開発による分析手法であり、構成としては競争ポジ
ションを横軸に長期的な事業(業界)の魅力を縦軸にとり全体を9象限に分けたマトリックス図表3
6を用いる。横軸の競争ポジションは実質的に自社の強さと同義である部分が大きいから、これを定
性ポートフォリオの代表と考えて良い。
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ビジネススクリーンの「事業の魅力」は・市場規模・成長率・競合状態・マクロ環境・参入障壁・必
要な資源・機会と脅威の出現頻度と影響の大きさ・業種の収益性などで計測し、「競争ポジション」
は・シェア・技術力・製品優位性(製品力)・経営の優位性(経営力)・コアコンピタンスの優位
性・売上高・収益性などで計測する。
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定性ポートフォリオは事業・製品の相対的な評価が難しい弱点をもつが、経営における優先順位や定
量ポートフォリオの位置づけで生じる曖昧さや誤りを排除する点ですぐれており、状況と目的によっ
て定量ポートフォリオと使い分けるのが良い。
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ポートフォリオは前記のような象限による基本的な判断だけでなく、そのパターンによっても多くの情報
をもたらす。以下にいくつかの例を挙げる。
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2.1 魅力の低い事業ばかりで構成されるポートフォリオ図表37
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このポートフォリオから得られる判断(解)は図表38 のごとくである。
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2.2 事業の魅力はあるが自社の力の劣る事業ばかりで構成されるポートフォリオ
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このポートフォリオから得られる判断(解)は図表40 のごとくなる。
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2.3 新規事業開発を除き適切なバランスを構成しているポートフォリオ
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このポートフォリオから得られる判断(解)は図表42 のごとくなる。
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2.4 自社の力が高いが規模の小さな事業で構成されるポートフォリオ
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図表43のような自社の力の強い事業ばかりで構成されるポートフォリオは技術ベンチャーや成長事
業においてニッチ戦略を採る企業などによく見られるが、このようなポートフォリオの場合、前述の
ように、自社の強さの計測が妥当になされているかどうかが問題になる。"この領域では、またはこ
の部分ではNo.1"という企業によくある陥穽である。
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このような事業構成の場合、最も警戒すべきは他社追随参入や他製品による代替である。また、弱み
は財務であることが多い。
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従って、自社の強さの計測にあたっては詳細で慎重な調査をすると同時に利益についても良く検討し
て判断をしなくてはならない。それらをクリヤーしたという前提での判断(解)は図表44のごとく
なる。
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2.5 負け犬象限に主力事業が存在するポートフォリオ
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図表45のような負け犬象限に主力事業があるポートフォリオでは必ず主力事業の利益の大きさと安
定性の確認行う必要がある。このような場合、利益(率)は必須情報である。
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主力事業に関しては恒常的な大きな赤字でない限り、セオリー通りの撤退、売却を実行するようなこ
とはあってはならない。
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また、まれに競合事業者の失敗(敵失)により実現することもあるが、低成長事業では通常の営業努
力や通り一遍の開発などでは事業を左方へ移動させることは難しいことを認識しておかなくてはなら
ない。
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継続的にこのポジションで、利益も極めて低いのであれば、新規事業の導入、開発を企業の命運をか
ける意気で、全社の英知を集めて行うべきである。
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このポートフォリオから得られる判断(解)は図表46のごとくなる。
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2.6 問題児、負け犬木象限にだけ事業製品が位置しているポートフォリオ
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図表47のポートフォリオは前項のそれに似ており、同様の処置が検討されても良いが、前項の例と
異なり、既に問題児象限に事業があるのであるから、この事業に全精力を傾けるのが良い。
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新規事業を形にするまでには大きな困難があるが、その困難を乗り越えた末に存在する事業が現にあ
るのは大きなアドバンテージである。しかも、成長率の高い事業の拡大、発展は停滞事業の収益拡大
などよりもはるかに成功しやすい。
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前項では負け犬象限の事業、製品を左方へ移動させるための革新的新型製品開発なども一つの策とし
て挙げたが、それらは行わないよりましという程度のものであり、その機会が見つかることも少な
く、見つかっても、それに乗じて成功する確率も大きくはない。
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従って、この企業のように問題児象限の事業・製品が既に存在する場合はそこに集中すべきである。
このポートフォリオから得られる判断(解)は図表48 のごとくなる。
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まとめ
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以上の所見の例でもわかるように、シンプルな構成のポートフォリオから、様々なことが直感的に判断できる上
に、これによって共通認識を形成したり、戦略の方向性を議論することもできる。従って、戦略に関わる者はす
べからくこれを使いこなすことが望ましい。
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