統合企業戦略論の戦略模式(統合企業戦略の基盤理論2)
戦略の範囲、対象と戦略模式

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始めに
ここで言う戦略摸式であらわされる戦略の姿は従来の戦略論にとっては斬新なものであるかもしれないが、統合企業戦 略論だけにあてはまるものでなく、いずれの戦略論にも適用されるべき概念である。
言い換えるならば、従来のすべての戦略論に欠けていた基本概念であるとも言える。さらに言えば摸式で説明される概 念の欠落が企業戦略論の進歩が無かった原因である。

1. 経営技術全体からみた戦略
経営技術は大別して「戦略」と「管理」に分けられる。企業活動の効率を"有効性×能率"で表すとすれば、能率 を上げるための経営技術が管理であるのに対し、戦略は有効性を高めるための経営技術であるとも言え、ともに 経営には不可欠である。



2. 現在の戦略研究と発展の主要な対象
現在の戦略論(経営論)で最も活躍をしているのはマイケル・ポーターであり、理論と権威のセンターは彼が所 属しているハーバード大学である。
しかし、このことが戦略における誤解を招くもとにもなっている。ポーターが戦略を論じると、その情報の受信 者である他の研究者、経営者、コンサルタント等は、ポーターは戦略の全てを論じていると勝手に受け止めてし まう。ここに混乱の原因の一つがある。
ポーターの研究、実践の主要な対象は事業戦略であって戦略全般ではない。
一方、戦略経営の要であるはずの企業戦略は企業戦略の始祖であるアンゾフ以降(もしくはアベグレンに代表さ れるPPMマネジメント以降)本質的な解明、特に戦略システムに関する理論確立は開店休業状態にあり、戦略 経営に支障を来す原因となっていることが推測される。ポーターの業績は素晴らしいが一度、戦略全体を俯瞰し て見直す必要がある。特に企業戦略をどのように位置づけるかが問われている状況にあると言って過言ではな い。



3. 戦略経営の本来目的および戦略定義から推定される戦略の模式
アンゾフの意図した戦略経営はすさまじい経営環境変化への対応であり、そのためにはマクロ的な視点を持ち、 プロダクトミックスの変更をも対象とすることを辞さない対応を案出し、総力を挙げて実施すべきものであると 位置づけた。それらを考えれば、「事業環境変化の認識、判断」「対応方策」、「実施につなげる内容」とそれ らを実施した場合の「(想定する将来)企業像」などがその要素としてあらねばならない。それらの位置づけも 含め戦略をわかりやすく図示すれば図表5のようになる。




方策は、実行内容を規定したもの(実行戦略)に落とし込まれなければ作動しないため戦略の要素として実行戦 略は不可欠であるが、方策と実行戦略の関係は目的と手段ということになる。また、方策の(最終的には実施結 果の)集合が全体像を形成すると考えれば構想である全体像と方策の関係も目的と手段という関係にあると言え る。
このような構造であるからこそ、経営の思いが至る将来企業像が実現するのであるし、戦略に関わる場合は目的 である構想や方策(基本戦略)などを常に意識することが大事であることがわかるであろう。



4. 全体像と方策、方策と実行戦略の関係
戦略では"個々の方策の成果の集合が将来の全体像(構想)を形作る"、"方策はいくつかの実行戦略の集合によっ て実現が担保される"など、「多くの手段が集約して一つの目的を達成する手法」が用いられる。
この際、「手段に対し厳格に目的の相似形」を求めることは避けなくてはならない。手段となる個別の実行戦略 に目的と一致しない部分があることを理由にそれを採用しないことがあってはならないということでもある。
一つの目的を複数の手段で達成することは当たり前のようにある。むしろ、そのようなケースが多い。その場 合、その中の手段の一つだけに注目すれば、その手段が目的と異なる部分を持っていることは十分あり得るが、 異質部分があることを理由に手段として認めなければ、ほとんどの目的は手段を失い、実現は不可能になる。手 段の異質部分を極小化し、目的に合致した部分を活かして大きな目的を達成するようにすべきである。うまくコ ントロールして手段全部で目的を遂行することこそが重要である
そのためにも戦略においてはいずれの段階でも目的(意識)が重要であるということでもある。





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