マーケティングと戦略

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マーケティングと戦略
1. マーケティングの実体と定義
図表26に見るようにマーケティングの定義はさまざまである上にわかりにくいものが多く、次々と新し
いコンセプトや手法を提案することでさらにその実体がわかりにくくなっている。
ただ、マーケティングの根幹はコトラーが提唱した当時から現在まで常に変わることなく図表27のよう
なターゲティング、ポジショニング、4P※ を根幹として構成されている。
ターゲティング:市場を細分化した上で、その中のどの市場にアプローチするかを決めることである。つ
まり、最初に"誰に"売るかを明確にすると言うことである。
ポジショニング:選択したターゲットに合った、製品のコンセプト等を(競合製品などとの比較で)決め
る操作がポジショニングである。

※4P:その選択された市場と製品コンセプトにふさわしい製品(Product)、価格(Price)、地域・流通(Place)、販売促進
(Promotion)を選択、決定することを意味する。



 






この不変の操作をもとにわかりやすい言葉で再定義するならばマーケティングは"何(どのような製品)
を、誰に、どのように売るかを決めること"と言ってよい。
ただし、コトラーも言っているようにマーケティングは需要、供給間が最適な関係となるようにその条件
を設計することであって「売ることや、販売」ではないとしていることに留意すべきである。
つまりマーケティングは "売り方"の設計であって"売ること"の実行ではない。




2. マーケティングが戦略であることの理由
「どの市場にどのようなコンセプトの製品をどのように売るべきか」は紛れもなく構想であり、最適な4
Pの設定は構想の実現手段でもある。
これは"実現方法をともなう構想"という戦略の定義にも合致している。そのようなことからもマーケティ
ングは戦略であるといってよい。
つまり企業戦略、事業戦略、製品戦略で形作られる戦略ヒエラルキーの中の製品戦略に位置するものと考
えてよい。

3. マーケティングの特性(マーケティングの制約、限界および独立性)
マーケティングはどのような業種でも、どのような場面でも必要性が高いと実感できることからそのニー
ズはおおく、その結果、マーケティングだけを対象とするコンサルタントや研究者が数多く存在する。
彼らの活躍は実務だけに限らず理論の深堀や拡張にまでおよび、マーケティングそのものが本来の目的や
定義から大きく範囲を拡げるに至っている。

それは本来の上位概念である事業戦略までマーケティングでカバーする科のようにさえ言われ、はたから
見てもそのように錯覚するほどである。しかし、製品に関する全てがマーケティングで取り扱われるわけ
ではない。
特に「何を、誰に、どのように」という定義の「何を」に該当する部分の自由度は小さく、マーケティン
グの対象製品は自社の既存製品もしくはそれに類似する製品に限られる。

全く新たな製品への進出などはマーケティングではなく戦略ヒエラルキーでいう事業戦略事業レベルで決
定されていなければならない。
同様に「誰に」の部分に関しても制約がある。例えば市場の選択において、新たに海外にまで拡げるよう
な選択、つまり、大きなリスクを伴う新規性の高い市場へのアプローチなどは上位の戦略によって決めら
れなくてはならない。
もし製品戦略に該当するマーケティングで事業や企業のプロダクトミックスや市場選択においてリスクの
大きな決定をすれば企業経営や戦略に混乱を招くことになる。

部分から全体を決めることは戦略経営の目的に反し、その効果を失わせるため、戦略経営の効果を享受し
たいならばマーケティングが事業戦略の範疇に踏み込むことはあってはならない。

しかし、逆に言えば、上記の制約範囲内(既存製品および現市場に密接に関係する市場を対象とする限
り)であれば企業戦略、事業戦略から独立して実施することができるということである。それは目的が上
位の戦略に抵触することが極めて少ないためである。
特に4Pといった限定した範囲に関してはなおさらである。
これが戦略の一翼を担いながらも独立性を持ち、上位戦略の影響を受けずに実施できる理由である。
念のため言えば、そうは言っても、従来と関係の薄い製品の取り込みやまったく従来と異なる市場へのア
プローチなどは上位の戦略に委ねなければならない。



4. マーケティングの研究成果やその手法に関する追記
マーケティングは研究者が多くその活動も活発で、その範囲は様々な領域にまで拡がっている。特に心
理、社会、統計、情報等、市場(消費者)と関係する領域では様々な成果が発表されている。そのこと自
体は素晴らしいが、そのような広がりの中に没頭することでマーケティングという優れたコンセプトを見
失う危険があることにも留意しなくてはならない。また戦略の一翼を担っていることを失念してはならな
い。



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