分析3(製品技術マトリックス)
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1. 製品技術マトリックス概要※
製品技術マトリックスは技術に関する最も基本的なツールであり、これなくしては技術の把握は難しい。
現在のところ企業技術の分析・把握の唯一のツールでもある。
 "企業と技術"のページで述べたように企業の最も基本的な資源は技術であり、技術は企業の弱み、強みの
原因を生む母胎でもある。従って、これを把握せずして適切な経営はできない。その意味でこの分析は技
術に関する分析というより経営の基本分析と位置づけても良い。
※本分析は1986年にアライドコンサルティングプリンシパル赤塔が開発したものである。

2. 製品技術マトリックスの構成
本マトリックスは製品、サービス(以降製品等もしくは単に製品と称す)と要素技術で構成される。
そのマトリックスの各セル(各セグメントの交点に位置する罫線で囲まれた部分)には製品等に関連する
当該要素技術の評価が記入される。
セルに記入される評価は同業他社との比較や業界平均と比較した技術力を表すものであり、その表記は多
くの場合○、△、×など視覚的に分かり易い記号を用いる。
また、この表記においては、関連する区分、属性などを示す識別に色分けや太字表示などが用いられる。
図表56
 




3. 評価と表記
 ・評価とキー技術(基幹技術)
競争のある環境での技術は日進月歩であるため、その評価はその時点での競合他社やトップ企業と比較し
て、○(優れている)、△(同等)、×(劣る)で表記する。
この際、基幹技術(キー技術)か否か、つまり「製品等の競争力に差を生む要素技術か否か」の判定も行
い、キー技術ならば評価表記を太字で描くことで表す。
従って太字の○は他社より優れた基幹(要素)技術であることを意味することになる。勿論、基幹技術で
あっても他社に劣っていると判断される技術もあり、それは太字の×で示されるということである。
また、その基幹技術が製品のコスト、品質、機能・性能(機能性能は以降「機能」と省略表示する)のど
れに関わるかの判定も行い、これに対応するカラーを決めておき、そのセル(もしくは表記)のバックグ
ラウンドなどを色分け表示する。(コスト、品質、機能の2つ以上に関わるものもあるが、その場合、該
当セルは2色、3色の混合ストライプで表示する)

 ・評価の仕方
評価は通常、業界、関係学会、ユーザーからのフィードバックなどの情報をベースにして自社内で行う
が、技術者だけでなくマーケティング&営業担当者が参加した会議体で行うのが良い。さらに公平を期す
ならば社外の技術者やコンサルタントなどをメンバーにくわえることも有って良い。



4. 技術資源と技術力の認識
 ・技術力の全体把握
自社の製品の技術力が他社に比べて優れているか否かはマトリックス全体を俯瞰して○、△、×の比率を
見ることによって容易に理解できるし、○、△、×の代わりに○→+1、△→0、×→−1などの数値に
置き換え、製品毎またはマトリックス全体の合計点を算出すれば数値で把握することも可能である。この
合計がマイナスならば劣っていることを表すし、プラスなら勝っていることを示すことになる。
特に、基幹技術(太字表記)だけを対象にした合計点は重要な指標となる。さらに、コスト、品質、機能
それぞれに集計すれば、そのいずれにおいて、強いのか、弱いのかの把握もできる。

 ・(企業)基盤技術の抽出と決定
製品技術マトリックスを活用することで企業を支える基盤技術を抽出、選択、決定することもできる。
この決定方法として、単純に数で判断する場合と売り上げや利益の大きさを判断に加える2通りのやり方
がある。
いずれの判定方法を主に採用するかは企業の状況によるが、数での判断も売り上げ等での判断も重要であ
るから、両方の基準での基盤技術を把握しておくのが良い。
マトリックスの製品サービス欄には、全体の中での売上高比率(または売上高)、前利益に占める当該製
品の利益の比率(または利益額)、戦略製品であるか否かを記入する列とマトリックスの下の段に基幹技
術と判定された数の合計を記載する行などが設けられているが、これらはいずれも基盤技術の判定のため
に使用するものである。
この製品技術マトリックスの下の段には要素技術毎の基幹技術数、それに売り上げや利益を重みとして乗
じた値、などが表示される行が設けられている。
また、基幹技術でなくとも、多くの製品等に関わる要素技術も企業にとっては重要であり、しかも関与製
品が多いため、その要素技術に技術革新などがあれば大きな影響を及ぼすことから基盤技術に準じた扱い
をするのが良い。(準基盤技術)
 



※ ?表示はその企業が決める閾値によって基盤技術に認められる可能性があることを示す

 ・戦略製品の基幹技術
戦略製品とは戦略構想の一端を担う製品は勿論であるが、一般には競争上重要な製品、経営が今後伸ばし
てゆくことを想定している製品、企業や事業の命運や盛衰につながる可能性のある製品、競争に勝たなく
てはならないポイント製品などの表現が当てはまる製品のすべてを言う。
これらに関する基幹技術は様々な形で研究開発の対象となるべきものでもある。

 ・製品等の競争力向上への寄与
機能、品質、コストの優劣からなる「製品の競争力」は基本的には関連する基幹技術に依存しているか
ら、その製品の競争力に問題がある場合は対応する基幹技術を向上させることによって解消することでき
る。製品の競争力不足の原因がコスト、機能、品質のいずれかであることが明確になれば、とるべき対応
はより一層明確になる。
(製品等の競争力自体が不明な場合は製品力分析を行うことで明らかにする)




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