1. 製品力分析
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製品力分析は市場・顧客の視点で自社製品と他社製品と比較した場合、どのような評価、順位になるかを
明らかにするもので、基本的には相対評価である。
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評価は品質、機能、価格毎に行い、製品力はそれらを総合した形で決定する。図表58
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また、製品力分析は、製品市場マトリックス分析の1つのセルに該当するセグメント毎に行うことを原則
とする。
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市場(セグメント)によってニーズが異なり、評価も異なるためである。したがって全製品、全市場を対
象にこの分析を行うことは現実的でなく、一部の問題となっている製品、もしくは重要な戦略製品や特定
の問題解決のために的を絞って行うのが普通である。
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この分析は製品技術マトリックスとも大いに関係がある。
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市場と技術が品質、機能、コストを介して直接対応するからである。
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例えば、製品市場マトリックス分析で、不振な市場や戦略拠点となるセグメントを見いだし、そのセグメ
ントでの製品力分析を行うことにによって、自社製品の競争力の課題のポイントが機能性能にあるのか、
品質にあるのか、価格にあるのかを見いだすことができる。それが分かれば、製品技術マトリックスから
対象とすべき基幹技術を特定し、その要素技術を強化するなどの対応操作が可能になる。
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2.評価
・評価比較対象
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製品力分析では製品市場マトリックス分析でいうセグメントを決めなくてはならない。選択したセグメン
トにおける競合他社製品と自社製品の比較評価をする。
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・各評価要素の細目(内訳)
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主要な評価要素は「機能」「品質」「価格」であるが、その内容を具体的にし、評価をし易くするために
それぞれに細目が設ける。
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製品は様々なものがあるから、この細目は対象製品によって適宜変えて良い。
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上記例(図表58)では機能は「主機能に関する性能評価」と「付帯機能に関する性能」「使いやすさ」
に分けて評価している。
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製品が鋏ならば切ることが主機能であり、その性能としては切れ味が、付帯機能としては切りやすさをサ
ポートする計測機能など、「使いやすさ」は持ちやすさなどが該当する。
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同様に、品質は「性能の劣化(しない度合い)」と「耐久性等」」「メンテナンス性」および「心地よさ
等」に分けている。
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性能の劣化(しない度合い)は鋏の切れ味の持続性であり、耐久性等は壊れないこと、故障しないこと、
不具合が発生しないことなど、メンテナンス性は性能を維持するための手入れや補修の容易さである。心
地よさ等はデザインと言い換えてもよく、これには美的な面だけでなく、人間工学的な使用のためのデザ
インをも含む。また所有することの優越感や満足感もこれに入る。
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また、これらの評価要素は相互に関係していることがある。
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例えば、ウオークマンは小型であることがデザインとして評価されるが、これを持ち歩いて音楽を聴くこ
とを目的に作られたものであることを考えれば、小型軽量であることが性能そのものでもある。このよう
な場合は品質項と性能項で(重複して)双方とも高い評価が与えられるということである。
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・重みづけ
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各評価項目、評価細目には重み記入欄があるが、まずこれを決定しなくてはならない。この重み付けも評
価の一環であり、重要である。
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この重みを決定するにあたっては当該セグメントの顧客ニーズを反映する必要がある。当然のことなが
ら、セグメントが変わればこの重みが変わってくる。
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・評価と結果表記
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当初の評価は5点法で行い評価要素の細目毎に点数を付けることで評価する。その際、全製品の中で最も
優れた製品を5点とし、それを基準に各社製品の評点を与える。
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この5点法の場合、中心値の3点が平均的評価(普通、可も無し不可も無し)であるとの目安は一応存在
するが、1点から5点まで平均的に分布していなくとも良い。
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この評価がなされたら、それぞれの細目の重みをこの点数に乗じ、各社製品の機能、品質、価格毎の合計
点を算出するが、総合評価でもそれぞれの重みを設定してあるため、この段階で(合計点を用いて)5点
法表示に直しておく。
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その値にそれぞれの重みを乗じ総合評点を算出し、この点数に基づいてそれぞれの評価要素での各社の順
位を記入する。
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・評価者と情報
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評価と重み付けは営業、マーケティング、製品開発などの社内の関係者が集まって議論をしながら行う
が、その際、基礎情報として市場ニーズ、購買動機、選好ポイントなど、何らかのデータがあることが望
ましい。
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このようなデータが十分でない場合はパネルやアンケートなどの形で顧客側からの評価を得ることが望ま
しい。社内関係者評価と顧客の社外評価を突き合わせると相違があることも少なくない。
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3.業務的効果(使い方)
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従来、技術と営業の関係が十分明らかにされていなかったため、それぞれが課題、問題を見いだして独自
に解決したり、場合によっては相互に非難し合ったりする現象が起こっていたが、製品力分析、製品技術
マトリックス(および製品市場マトリックス分析)を組み合わせて活用することで両者一体となった効率
の良い活動が可能になる。
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つまり、製品力分析が示す結果から、問題が品質、機能、価格のいずれにあるのかがわかり、製品技術マ
トリックスで、その問題解決のためにはどの基幹技術をどのように強化すれば良いか(対応策)などが分
かるようになるため、技術と営業の関係や役割分担も自ずと明確になり、両者のコンフリクトなどは解消
する。
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また、製品力が優れているとの分析結果が得られたにも関わらず他社よりシェアが低く、しかも利益が上
がらない場合はマーケティングや営業のパフォーマンスが悪いと考えられる。その逆に、製品力は低いの
にシェアが高い場合もある。この場合は弱い製品力、技術力をマーケティングや営業力がこれをカバーし
ているということになる。
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