1.技術戦略グリッド※概要
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技術戦略グリッドは研究開発テーマを経営の目的区分を用いて把握し、SBU毎に適切なテーマと資源配
分を実現するためのツールである。
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※本分析は1990年にアライドコンサルティングプリンシパルの赤塔が開発したものである。
2. 研究開発テーマの経営目的区分
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使用する経営目的区分は以下の8つである。これを用いてSBU毎に関係するテーマを区分することで、
経営視点で研究開発の全体が把握できるようになる。
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現商品の機能向上、先進化、ニーズ適合などを製品として具現化する研究開発(現商品に類似のもの
であれば多少異なっていても当範疇)
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・用途技術開発(顧客における使い方を高度化、多様化したり、より使いやすくするためのもの)
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・技術サービス(顧客への技術データ提供、使用ノウハウ提供、クレーム処理)のため
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・自社製品に付随するサービス(据えつけ、初動立ち上げ等)のための研究開発
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・現に問題となっている不良率、事故等の減少の為の研究開発
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・現状設備などを前提とした小変革ですむ効率改善の為の研究開発(大改革は4)
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・新設備、新技術の導入、設備更新及びそのための検討、研究開発(日常保守等の
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・基幹技術(個別工程技術)の深耕によるコスト、品質、機能の向上のための研究開発(強みの強
化、弱みの補填)
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・コスト、品質、機能または効率の向上をもたらす大幅な改善、改革のための研究開発(新設備の開
発やこれらの適用も含む)
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・生産システム、業務システムの先進化の為の研究開発
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・現事業、製品の脅威、機会となる技術革新への対応のための評価、研究開発
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・個別基幹技術(領域)で起こる技術革新への対応のための評価、研究開発
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・自社関連の学術領域で起こる技術革新への対応のための評価、研究開発
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現事業の市場の延長線上で考えられるが原理、仕組みが今と大きく異なる製品事業の研究開発(実現
が近い例としては燃料電池自動車や介護AIロボット、遠い例としては核融合、宇宙太陽光発電な
ど)
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・新規事業の種となる技術/製品を作るための研究開発
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(いずれもすでに独立した事業として立ち上がっている場合や現に開発途上にある事業は除外)
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事業領域拡大につながる可能性のある新領域技術の研究開発(先に対象となる技術領域や分野が特
定、想定されている場合にのみ該当、そうでない場合は9に区分)
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研究開発者の興味に基づく企業内容からは異質なテーマ等が対象。多くの場合、この区分に該当する
テーマはどの企業でもあまり見あたらないが、小さな割合であっても存在することが望ましい。
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3. 構成
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上記の研究開発が担う経営的役割を縦軸に、SBU(戦略ビジネスユニット)を横軸にとったマトリック
スであり、各セルには該当する研究開発テーマを記載する。ただし、7,8,9の区分の研究開発は企業
全体で取り組むことが多いから、その場合はSBU区分が不要である。従って、全体を示すと図表59
のような図になる。
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資源配分を見る場合はこの該当するセルに予算もしくは投入研究開発者数を示す円を描いたものを別途作
成して用いる。図表60
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4. 技術戦略グリッドによる状況把握
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専門分化が進んだ現在、研究開発者でも自分の専門領域外のテーマを完全に理解することが難しい時代で
あるから、経営者がそれらの個別のテーマの内容に精通していなくても当り前である。
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しかし、その結果、経営と研究開発が次第に乖離する現象が生じる。
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この乖離は、経営側がテーマの内容を理解していないからではなく、そのテーマの(経営の立場から見
た)目的と期待効果が不明なことに最大の原因がある。
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極言すれば、経営者にとってはそのテーマの経営目的(経営において果たす役割)がわかり、その成否の
可能性(成功確率)、必要資源、効果(事業への寄与内容と大きさ)さえ示されていれば、技術的内容は
分からなくても良い。(それほど、経営上、何を目的としているかが大事という意)
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従って、技術戦略グリッドのような経営の目的分類で、テーマが分類され、SBU毎に配置され、全体が
俯瞰できれば両者のかい離は飛躍的に小さくなる。
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それだけでなく、このSBUと区分によって大まかであっても目的が示されることで、(上記で不要とま
で極言した)テーマ内容の理解さえもできるようになることがあるし、研究開発者側も全体の中で自分の
業務がどのような役割を果たしているかが理解でき、モチベーションが高まる効果や目的を再確認できる
効果もある。
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技術戦略グリッドの構成や資源配分をプロダクトポートフォリオや製品技術マトリックス分析で得られる
情報とあわせて考えれば、現在の各事業(SBU)の研究開発テーマやその構成が適切なのか、また、他
の区分との比率を考えた場合適切な資源配分であるか否かの判断も容易に行える。
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勿論、これをもとに全体のバランスを修正することもできる。
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事業部制を採用しているところでは研究開発の資源配分は大きな事業部に偏りがちであり、成長途上の領
域や事業への支援が手薄になる傾向がみられる。
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このような場合、トップが介入しない限りこの是正は難しいが、従来はその根拠が明白でなく、介入が難
しかった。技術戦略グリッドがあればそれを根拠に、トップが介入しこの是正を行うことができる。
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ただし、技術戦略グリッドはあくまでも研究開発の現状把握とテーマや資源配分の適正化のための分析手
法であり、これだけでテーマ設定や実施決定を行うことは難しく、そのためには研究開発テーマも統合戦
略に組み込まなくてはならない。
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