分析6(研究開発テーマポートフォリオ)

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1.研究開発テーマポートフォリオ
テーマポートフォリオも外形はプロダクトポートフォリオと同じであるが、縦軸を戦略整合性、横軸には
実現(目的、目標達成)確率、図中の円の大きさは得られる効果(売り上げ、増分売り上げ、利益、増分
利益等)を表すものである。図表61
※テーマポートフォリオの多くはコンサルティングで使用されるが、軸のとり方、円のなどが示すものに関して
はコンサルティングファーム毎に異なることがある


 



2. 技術戦略グリッドとの比較
研究開発テーマポートフォリオも技術戦略グリッドと同様、研究開発の状況を把握し、チェックして、テ
ーマ構成や資源配分を適正化するための分析ツールである。
技術戦略グリッドが主に経営上の目的の視点で分析や把握を行うのに対し、テーマポートフォリオは得ら
れるであろう成果、研究開発の全体効率、リスク等の視点で分析、把握を行うものである。
端的に言えば、経営の意思や判断を反映させるのが技術戦略グリッドであり、単純に全体効果を最大化す
るのがテーマポートフォリオだとも言える。
テーマポートフォリオはテーマ候補の中から実施するテーマを直感的に「選択(ピックアップ)」するこ
とにより適しているが、逆に企業戦略から見た資源配分をチェックすることや事業毎の適切な資源配分を
把握、検討することには不向きである。
従って、この両者を併用することが考えられるが、悩ましいことに、視点が異なるため、必ずしも答えが
一致するとは限らない。



3. テーマポートフォリオの活用の仕方
・全体把握、分析
テーマポートフォリオでは「リスクを包含した成果」と「戦略整合性」の2つの観点からだけではあ
るがテーマの属性が視覚的に容易に把握できる。
しかし、どのような全体像やバランスが正しいのかの答えは示し得ない。
それを判断するためには事業環境や自社の課題などから得られる情報を総合しなくてはならない。
つまり、テーマポートフォリオに加えて第3の理由付けとなる情報や分析もしくは高次の判断が必要
で、テーマ選定に関しては単独での答えは導き出せない分析であるということである。
例えば、自社が存亡の危機にある場合、成功すれば大きな成果をもたらすがリスクの高いテーマに賭
けることも1つの考えであるし、成果は小さくとも確実に成果の出る地道な競争力強化テーマを積み
上げてその危機を乗り越えようとすることも誤りではない。このいずれを選ぶかは経営判断に委ねら
れる。

・テーマ選択への応用
技術戦略グリッドもテーマポートフォリオも欠点を持つが、統合戦略の適用ができない企業ではこれ
らを活用してテーマ選択を行わざるを得ない。(ここで言う選択、決定とは数多くのテーマの中から
のピックアップである)
従って以下にその前提条件に沿った選択例をいくつか示しておく。
選択の視点
テーマポートフォリオでの選択、決定は基本的に成果の最大化を目指して行われるが、それだけでは
なく、テーマバランスも重要な判断材料となる。




4. テーマの選択例
全テーマ候補を示すテーマポートフォリオが下図のようである場合、このなかからA〜Cに該当するそれ
ぞれの考え方に沿ったテーマを選択する例を示す。

 



A リスクをとって大きな成果を狙う選択の例 図表63
このような選択方針を設定する背景としては"企業業績が好調で特に喫緊の課題も見あたらない場合"
や、全く逆に"企業が危機に瀕していてその存亡を研究開発に託す場合"などが考えられる。
リスクを承知で大きな成果を期待するのであるから、円の大きいテーマを優先して選択することにな
る。ただし、成功率も戦略整合性も良いに越したことはないため、ポジションも幾ばくかの割合で考
慮されるべきである。従って、その優先すべき円の大きさとポジションの折り合いをどこに求めるか
が問題となる。(Aが破線になっているのは選択するか否かの判断が難しいことを示す)
 



B 研究開発と事業が協働関係にあることを優先した選択例 図表64
このような選択方針をとるのは事業や企業が技術依存型であって、研究開発が事業運営に不可欠であ
る特性を持つ場合か、研究開発と事業の遊離を修正する目的でテーマ設定を行う場合である。
勿論、この場合も円が大きいテーマが望ましいため、ここでも円の大きさとポジション(象限)の兼
ね合いは問題になるが、戦略整合性を第1に、次いで成功確率を優先して選択が行われる。
 



C バランスを重視し結果として効率を追求する選択例 図表56
目的は研究開発の効率高めることにあるが、単純に成功率の高いテーマを優先するのではなく、様々
なテーマを選択することで結果として効率を最大化させるという考え方をする。
研究開発は企業において様々な役割を果たすし、他の投資と比較すれば極めて大きなコストパフォー
マンスを実現する可能性もある。そのような多様性と可能性を考えれば、いずれかの目的だけに特化
するのは、その多様性と可能性を捨てることにつながり、結果的に効率が低くなると考える。従っ
て、極端に成功率の低いテーマなどは対象外とするが、各象限から相対的に優れた位置をもつテーマ
を選定する。

 

このような例でも分かるようにテーマ選択に用いるには一義的な選択は難しく成功率、円の大きさ、戦略
整合性の兼ね合いをケースバイケースで判断することが求められる。そのため、必然性は希薄で選択結果
に対する異論も出やすい。



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