統合戦略システム(戦略のあるべき形と戦略の完成)

完成までの作成プロセスから見る統合企業戦略システムの実体

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1.統合企業戦略の主要要素(構成材料)
統合企業戦略の形成には2つの主要なパーツが必要である。その一つは一般で言ういわゆる企業戦略と呼ばれる「
合企業戦略の模式でいう全体戦略」と実行内容を規定した「実行戦略」である。(この両者の相互の関係などは戦略
の模式を参照)全体戦略には大まかな表現であっても個別の方策が内包され、それらによって形成される構想が明確
でなくてはならない。
しかし、戦略の模式を見ればわかるように、これだけでは戦略は完成している訳ではなく、作動しない。それを実現
する具体的な内容を規定した実行戦略がこれと組み合わされて初めて戦略として完成し作動する。以下にその主要材
料を使った統合企業戦略をステップバイズに説明する。



2.統合企業戦略の作成(戦略の完成)

STEP1 全体戦略のリスト化と実行戦略案の作成
・全体戦略のリスト
すでに作成された全体戦略を箇条書きにしたリストを作成する。このリストアップの対象には全体戦略を
構成する方針、方向、目標、コンセプトなどのすべてが含まれる。





ただし、この箇条書きにした方策等が全て同等の重要性を持つことはないし、実施にあたってもその強度
(実施の程度)が分からなくてはならないため、方策等の企業戦略における重要性に鑑みて重み付けがな
される必要があるが、リストにはその重みもリストに書き加えておく。

・実行戦略案
もう一つの部品である「実行戦略案」は図表10のようなシートを埋める形で個人や各セクション等が立
案、提案するものである。内容は自部署もしくは担当者がその使命を果たすための策であることが多い
が、それらにこだわることはなく、企業戦略が対象とするような内容でであっても構わない。ただし、内
容が具体的であることが必須の要件である。




・実行戦略案リスト
多くの部署や社員から出てきた複数の提案をリストとして集約したものが図表11行動戦略(案)リスト
である。



 




STEP2 マトリックス作成  
STEP2ではSTEP1で作成された方針、方向性等の集約リストと実行戦略案集約リストで図表13の様なマト
リックスを組む。このマトリックスは後者が前者の内容に対しどの程度整合性があるかなどの評価を行うための
ものである。
評価は「戦略整合性」と「経済効果」と「間接的効果」の3つの観点から行うためマトリックスにはその3種の
評価欄を設けるが、それぞれの評価が均等の価値であることは少ないためそれぞれに重みを記入する欄も設けて
おく。
 





STEP3 評価  
・個別評価
「実行戦略案が全体戦略にどの程度整合するかを評価する整合評価」、「行動戦略(案)のもたらす経済
的効果の評価」、「整合評価や経済効果評価以外の効果を評価する間接的効果評価」の3つの評価を行
い、これらを総合して実行戦略案の評価を行う。
評価はどのような方法で行っても差し支えないが、点数を用いた定量的評価を適用する方が後の処理がや
りやすい。
整合性の評価に関しては一つの実行戦略案が一つの方策だけに対応しているとは限らず、いくつかの方策
に関係することもあるから、その点に留意しなくてはならない。
この評価の過程で提案者の意見を聞くことができれば、提案者側に修正の機会を与えたり、他の新たな実
行戦略案や次につながるアイデアを生むなどの波及効果が期待できるし、評価側の内容理解も進むため主
要な実行戦略案に関しては提案者に対する戦略立案者および評価事務局による内容聴取や両者のコミュニ
ケーションがあることが望ましい。

・総合評価(評価合計)
それぞれの評価数値にその評価項目の重みを乗じた数値を合計して最終評価が数値としてなされる。でき
ればこの数値に成功率を乗じた数値も併せて表記することが望ましい。(図表には見やすくするため、こ
の欄を省いてある)
この評価結果が記入されたマトリックスは図表14のようになる。







STEP4 実施限界の設定と方策 
実行戦略案を総合評価点(または成功率を乗じた評価点)の順に並べ直し、必要資源(人、資金)を上位から順
に逐次加算して累計値を算出し、それを該当欄に記入する。
この必要資源の累計が戦略実行に振り向けることのできる人数や金額に達したところで仮のラインを引く。図表
15
このラインはあくまで仮であるが、これより上にある実行戦略案は実施可能であり、下にある実行戦略案は実行
されないことを示すものである。

 

大企業であれば、外部調達などで資金の手当はかなりの額までできるが、それでも急な適切な人材の手当は難し
い。そこで、少なくとも日頃から、戦略の実行にかけられる人工(にんく)を把握しておくのが良い。これを戦
略工数と言う。
このように資源制約でのライン引きをした後、そのラインより上にある実行戦略案を中心にした場合、各方策、
方針等、つまり全体戦略が実現できるか否かを検討する。
その際、必要資源量も変更することがあってよい。
勿論、企業戦略の方策の方も柔軟な対応が可能かどうかを検討し、必要ならば、こちらも多少の修正が行われ
る。
このステップでは方策毎の実現可能性も検討する。その実現が可能と考えられる方策等には最下段の方針方策等
の充足度合いの欄の該当セルに○が、実現できない方策等には×が記入される。
もし、対応する実行戦略案のない(×マークの付いた)方策や、対応する実行戦略案があっても、それだけでは
十分でないと判断される(△マークの付いた)方策等がある場合は、この段階で、その方策と関係が深いと目さ
れる部署、部門、個人に対し、改めて、対応する実行戦略案の作成を要請し、これを追加することになる。




STEP5 戦略の再検討 
STEP4で要請した実行戦略案が出されたら、ステップ4の各種修正を含めた実行戦略案に関して再びSTEP
3,4に示した評価、選択等を改めて行う。図表17
 


このような操作を何度か繰り返しても、どうしても対応する実行戦略が案出されない方策等(最下段の方針方策
等の充足度合いの表示が×の判定の方策等)が残る場合は、その方策が適切でないか、もしくは戦略、方策その
ものが自社の能力を超えていることなどを示すため、企業戦略の方を修正しなければならない。
構想や方針やコンセプトがいかに心地よく、もっともらしくとも実現の手段もなく、実現するための資源も手当
できないならば戦略として成立せず意味がないし、一部であっても、極めて重要な方策が欠落すれば、それらが
集合して実現する構想も変わるからである。
また、ライン以下の実施しない実行戦略案に経済効果等が大きい実行戦略案が数多く見られる場合は戦略全体を
見直してみる価値がある。
この様な現象が生じるのは、全体戦略立案において核とすべき有力な方策があるにもかかわらずそれを見落とし
た可能性があるからである。核となる方策等が変われば、構想(企業戦略)そのものが変わる可能性は高い。



3.統合戦略で作られる戦略の優位性
このような手順を経て作成された(完成された)戦略は他の方式で作成された戦略に比べ下記のような優れた特性を
有する。

@実施が容易で戦略実現可能性が高い
実行戦略(案)は業務で現状に精通した各部門、各部署、もしくは個人が現実的な状況を踏まえた上で案
出した実行戦略であることが多いため、具体性と実現性において上位戦略をブレークダウンして作成する
実行戦略よりはるかに優れている。
A戦略の一体性が保たれる
現在、戦略の完成方式として多くの大企業で採用されている"調整型ボトムアップ方式"などに比べて戦略
の一体性において遙かに優れている。
Bトップの意思が反映された全体最適な戦略経営ができる
 "調整型ボトムアップ方式"などに比べて、企業トップの意思が反映した戦略となり、真の戦略経営が実現
できる。
C組織の総力が結集できる(ベクトルが揃う)
実行戦略(案)は誰もが提案可能であることもあって、それぞれの特性、能力、知見、経験を活かすこと
ができる。しかも構想実現に向けて組織の全てのベクトルが合うことになる。
D戦略の欠陥を補える
経済的効果の評価観点を加えていることで、企業戦略(方策等)に関係ない実行戦略も採用される可能性
がある。多くの場合、これは企業戦略に内在する欠陥部分を補完するものであり、結果としてその欠陥を
修正できる。
E積み残しが少ない
従来の方法では、往々にしてやれること以上の行動戦略が設定され、期の終わりには多くの積み残し生
じ、それによって戦略(構想)は胡散霧消する。実行戦略をよく知った提案者を中心に内容に見合った適
切な資源を投入して実施する統合戦略方式ではそのような未実施、不実施が少ない。




4.統合戦略における事業部戦略、部門戦略等の位置づけ
事業戦略の位置づけは戦略模式で説明したとおり、実行戦略も含め当該事業にかかわる部分を取り出してまとめたも
のが事業戦略となる。
事業部長やその直属スタッフが企業戦略立案(の会議体)に直接かかわることで事業部としての意向はある程度担保
されているはずであるし、事業に関する情報なども提供し、それら全てを勘案した上で全体最適の立場から作成され
た戦略であるから、これを甘受しなくてはならない。
各部門の戦略に関しても事業戦略と同様である。

 


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