1.技術と企業
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そもそも企業は技術に立脚して成立するものである。企業はいずれかの機能において優れていることを以て、社
会がその製品、サービスの供給役割を委嘱することで成り立っている。
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なぜなら、最も適した者に委ねることで社会全体の効率が上がり、豊かになるからである。
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これらの各機能はいずれも技術が核となって作動し、役割をはたしているものである。
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そして、その社会効率を維持し向上させるために競争があるが、そのように考えれば企業の競争とは技術の競争
であるとも言える。
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2.技術の定義
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技術とは"特定の目的を達成するための繰り返し性のある方法"である。
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この定義とその実態から演繹される説明を付け加えるとすれば以下のようである。
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・定義で言う方法とは手順、材料、工具機械、決まった工夫などから成り立つものであり、これらの各要素
はある程度普遍性がなくてはならない(ほとんど手に入らない材料や2度と作ることのできない機械を使用
した方法などは技術とは認められない)
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・技術の本質的実体は方法であるから、方法を確立した者、それをよく知る者は他の人にそれをトランスフ
ァーできるはずであり、それが派生する技術の要件ともなる
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・繰り返し性とは100%を意味しない。従ってある程度以上の確率があれば良い
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・技術は「方法」であるから、目的が達成されさえすれば良く、その時点で、既に科学的に証明されている
か否かは問わない
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・達成の可能性や結果は実施する人に依存してはならない(人に依存する方法は技能であって技術ではな
い。後述の技能の説明を参照)
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・技術の要件として科学的解明や証明は不要である。ただし、技術と科学には密接な関係があり、技術は科
学と全く独立して存在する訳ではない。
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3.技術化と技能
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技術が繰り返し性のある方法であるとすれば、その大半は説明、記述が可能なものである。しかし、企業には多
くの説明、記述されない方法が存在していることが多い。これは"技術化されていない技術"もしくは原始状態の
技術ともいうべきものである。
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原始状態の技術を上記の定義に合致した状態にすることを"技術化"と呼ぶ。
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企業は技術によって成り立つ組織であるとすれば、全ての原始状態の技術をできる限り技術化し、それを活用で
きるようにし、蓄積すべきである。それが企業のポテンシャルの源泉ともなる。
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技能は経験等に裏打ちされた特定の人に依存したもので、その人のカンや、えもいわれぬ判断、操作等を指すも
のでもある。したがって、技術の定義に当てはまらず、技術とは一線を画すものとされているが、これらも突き
詰めれば、様々な判断や操作に分解できる。つまり精緻微細な操作や判断を下す基準の説明や計測が可能になれ
ば技術化できるものである。
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4 技術と要素技術
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技術は「自動車をつくる技術」とか、「地面に深い穴を掘る技術」など目的ごとに技術が存在するのが普通であ
り、その定義からもわかるように目的があってはじめて意味をなし成立するものである。
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もし、自動車製造の工程の中で塗装を外注先の企業が行っているとすれば、その外注先の企業にとっての直接の
目的は自動車製造でなく、あるスペックを満足させた塗装を行うことが目的となり、その企業の持つ技術は自動
車製造技術ではなく「自動車車体の塗装技術」となる。
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また、技術はその目的を達成するためには多くの工程を経るのが普通である。
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そして、この工程はそれぞれに目的を持つから、そこにも(工程を目的とする)技術があるということになる。
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このことを自動車製造技術で例示すれば図表19のようにあらわすことができる。
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つまり自動車製造技術は多くの技術が集まって形成しているのである。
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それらは相互に並列、もしくは階層をなす形で表すことができる。
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この図の一番上の階層を技術と呼ぶ。その下位に位置している様々な技術は要素技術である。
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本来、技術を工程や部分毎に分解してゆき、それ以上細分できない単位の技術(それ以上分解すれば意味をなさ
ない)を要素技術と呼ぶが、この細分の程度は技術や要素技術のその企業にとっての価値や意味により決まるた
め、統一された単位(要素技術)は存在しない。
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つまり、「技術」と「要素技術」の区別は企業の判断と事業の実態によって決定されるのである。
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このような成り立ちから技術のほとんどは要素技術が集合した形て成立しているともいえる。従って、企業等の
技術を論じるにあたっては、「要素技術」と「技術」を明確にすることが必要となる。
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技術は目的があって成立することを考えれば、技術や要素技術のいずれであっても評価はその目的にとっての効
果や有効性を対象とした評価でなくてはならない。
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また、技術が進歩することや競争の根源であることを考慮するならば、評価は競合他社もしくは最も優れた技術
や業界の平均的な技術などと比較した相対的な評価がなされなくてはならない。
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技術を評価したり把握したり戦略の対象としたりする場合は技術がこのような構造で形成されていることを認識
しなくてはならない。さらに言えば競争上、技術には重要な要素技術とそうでない要素技術があることも認識し
ておく必要があるし、その重要度は何を目的とするかで変わりうることも理解しておく必要がある。特に研究開
発の対象とする要素技術は目的やその技術の応用展開可能性などを考えて選択しなくてはならない。
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5.基幹技術と基盤技術
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技術はその定義からも分かるように目的である製品やサービス(以下製品等もしくは単に製品と称す)毎に存在
するが、その目的である製品等の品質、機能、コストを左右し、競争の要となる要素技術は企業にとって極めて
重要となる。一方、そうでない要素技術は、無くてはならないものの、その時点ではそれほど重要視する必要は
ない。(時間がたてば製品等の品質、機能、コストを左右し、競争の要となる要素技術は変わってくる可能性が
ある)
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このように目的とする製品等の品質、機能、コストを左右する重要な要素技術を(その製品等の)基幹技術、ま
たはキー技術と呼ぶ。
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また、(自社の)多くの製品等において基幹技術となっている要素技術、もしくは売上げや利益の柱となるよう
な主要製品等の基幹技術は、企業を支えている要素技術とも言えるため、これらを(企業もしくは事業の)基盤
技術と呼ぶ。
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単に多くの製品等に共通する要素技術も、それが競争に直結する基幹技術でなくとも企業全体では多用されてい
る場合は基盤技術に準じて扱うのが良い。
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基幹技術は製品の競争力に直結しており、これを磨き高めることで市場での優位を確保することができる。
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一方、基盤技術を向上させれば最も効率よく企業全体の力と収益力が向上する。
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従って、経営者は自社の基幹技術、基盤技術が何であるかを把握し、個別に強化が可能か否かを見極め、どのよ
うな優先順位でどの要素技術を強化するかを考えなくてはならない。
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※基幹技術、基盤技術に関しては本HP内の分析の中の「製品技術マトリックス」を参照するとより理解が進む
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